「いい商品をつくっているのに、手元に残る利益が少ない」「もっと消費者に直接届けたい。でも何から始めたらいいかわからない」——こうした悩みを抱える製造業の後継者と話すたびに、私は共通した原因に行き当たります。それがOEM・卸売への依存です。
卸売や商社を通じた販売は、安定した受注量を確保できる一方で、価格交渉は常に買い手側が有利です。棚に並べてもらうために値引きを求められ、自社の利益率はどんどん削られていく。そして商品の先にいる消費者の顔が見えないまま、ただものをつくり続ける状態になります。
しかし、OEM・卸売依存から脱却し、D2C(直販)への転換を果たした製造業の多くは、共通して「あのとき踏み出してよかった」と言います。本記事では、脱却後に実際に起きた変化を3つの視点から整理します。
この記事で紹介する「変化」は、すべてPOPWORKSが支援した、または取材した中小製造業の実例をもとにしています。
変化1|価格決定権が自分たちの手に戻った
OEM・卸売依存の最大の問題は、価格を自分で決められないことです。どれだけ原材料にこだわっても、製造工程に手間をかけても、最終的な販売価格は卸先が決める。結果として、利益率が低いまま大量生産を強いられる悪循環に入ります。
D2C転換後、最も早く実感できる変化がこれです。消費者に直接売ることで、自社の世界観に見合った価格を設定できるようになります。
実際に何が変わるか
たとえば、ある食品メーカーは卸値で300円で取引されていた商品を、ブランド設計とEC立ち上げを経て、直販では850円で販売できるようになりました。「同じものを売っているのに、伝え方が変わっただけでここまで変わるとは思わなかった」というのが担当者の言葉でした。
価格が上がるだけでなく、利益率も劇的に改善します。卸売では利益率が10〜15%程度だったものが、直販に切り替えることで50%以上になるケースも珍しくありません。
価格決定権はブランドの根幹
「安くしないと売れない」は、ブランドがまだ伝わっていないサインです。正しく伝わっている商品は、適正価格で売れます。価格を下げる前に、まず「なぜこの価格なのか」を伝える設計を見直してみてください。
変化2|顧客の声が直接届くようになった
卸売経由の販売では、消費者の反応がほとんど届きません。売れた数量はわかっても、誰が、なぜ、どんな場面で買ったのかがわからない。改善のための情報が手に入らないまま、次の製品開発をしなければならない状況が続きます。
D2Cに転換すると、これが180度変わります。
POPUPで起きたこと
最初の一歩としてポップアップ出店をした製造業の多くが、「こんなに直接話せるとは思わなかった」と驚きます。消費者がどんな言葉で商品を選び、どこに価値を感じているかが、その場でリアルタイムにわかります。
ある雑貨メーカーは初回のポップアップ出店で3日間、延べ200人以上の来場者と話しました。その中から「実は使い方がわからなかった」「こんな用途にも使えますか?」という声が集まり、次の製品改良とECサイトのFAQ整備に直接生かされました。
ECにおいても同様です。レビュー、問い合わせ、SNSのコメント——これらすべてが、卸売経由では決して手に入らなかった「生の声」です。
最初のPOPUPは「売る場」ではなく「聞く場」
初回のポップアップ出店は、売上よりも「顧客の声を集める調査」と位置づけましょう。何が刺さって、何が伝わらないかを知ることが、その後のブランド設計・商品改良・EC運営のすべてに影響します。
変化3|「次の一手」が見えてきた
OEM・卸売依存の状態では、経営の主導権が自分たちにありません。「来年の受注がどうなるか」「取引先の方針が変わったらどうなるか」——不確実性の中で、経営の方向性を描きにくい状況が続きます。
D2C転換後に後継者が共通して話すのが、「次に何をすべきかが見えてきた」という感覚です。
自分たちで仮説を立て、検証できるようになる
直販チャネルを持つと、データが手元に集まります。どの商品がよく売れているか、どの層に刺さっているか、どのSNS投稿がクリックされているか。これらのデータをもとに、「次はこの商品を強化しよう」「このターゲット層に向けてコンテンツを作ろう」という具体的な仮説が立てられます。
卸売では「売れた・売れなかった」しかわからなかった世界から、「なぜ売れたのか・次は何をすればもっと売れるか」がわかる世界に移行します。これが、経営の自由度を大きく高めます。
D2Cは「売り方」ではなく「経営の学習サイクル」
D2C転換の本質は、消費者に直接売ることで経営情報が手に入るようになることです。売上より大切なのは、「何が刺さっているか」がわかるようになること。そのフィードバックが、次の商品開発・ブランド強化の燃料になります。
まとめ|OEM脱却は「リスク」ではなく「選択肢を増やすこと」
OEM・卸売依存からの脱却と聞くと、「取引先との関係が壊れるのでは」「いきなり直販を始めて失敗したら」と不安になる後継者も多いです。しかしPOPWORKSが伴走してきた製造業の多くは、OEMをゼロにするのではなく、直販チャネルをひとつ追加するところから始めています。
OEMと直販は対立しません。まず小さく始めて、「直接売れる」という手応えをつかむ。その成功体験がブランドへの自信になり、次の投資判断につながります。
POPWORKSは「小さく始められるD2C転換」を信条としています。ブランド設計から最初のポップアップ出店まで、伴走して一緒に進めます。
まずは現状の整理から——無料ブランド診断では、あなたの会社のD2C転換フェーズと、今すぐ取るべきアクションを一緒に明らかにします。